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皇太子御成婚

こうたいしごせいこん

 皇太子徳仁親王(今上陛下)の御成婚は、平成5年(1993)の6月9日に行われた。その婚儀は、皇太子明仁親王(上皇陛下)の時(昭和34年)と同様、明治以来の『皇室婚嫁令』に準拠している。
 『皇室婚嫁令』(のち『皇室親族令』所収)は、明治32年(1899)の末、翌年に予定された皇太子嘉仁親王(のち大正天皇)の御成婚に先立って勅定公布された。これは、平安時代以来の宮廷公家社会における和風と、鎌倉時代以降の武家社会における儒風と、近代的な洋風とを組み合わせて成文化された。その「皇太子成婚式」を「前儀」・「本儀」・「後儀」に分けて記せば、左の通りである(所功博士著『皇室の伝統と日本文化』より)。
 

前儀/①賢所・皇霊殿・神殿に成約奉告の儀 ②神宮・山陵に勅使発遣の儀、奉幣の儀 ③納采の儀(命納采使・妃氏本第の儀) ④勲章(宝冠章)を賜ふの儀、贈劔の儀 ⑤告期の儀(命告期使・妃氏本第の儀) ⑥贈書の儀(御書使の儀)
本儀/⑦賢所・皇霊殿・神殿に結婚奉告(告成婚)の儀 ⑧妃氏入宮の儀、皇太子本宮参入の儀 ⑨賢所大前(成婚礼)の儀 ⑩皇霊殿・神殿に謁する(拝礼)の儀 ⑪参内朝見(拝謁)の儀、皇太后に朝見(行啓)の儀 ⑫供膳の儀
後儀/⑬(供)三箇夜餅の儀 ⑭(成婚後)宮中饗宴の儀 ⑮神宮・山陵(神武天皇山陵並びに先帝・先后の山陵)に謁する(行啓)の儀

 
 このように、「賢所大前の儀」を明文化したことにより、いわゆる神前結婚式となっている。昭和34年(1959)と平成5年(1993)の皇太子御成婚も、「賢所大前の儀」を「国の儀式」とみなして執り行われた。
 
【コラム】天皇晴れ(エンペラーウェザー)
 戦後、昭和21年(1946)以来の国民体育大会開会式や、昭和39年(1964)10月10日の東京オリンピックの開会式(および閉会式)など、昭和天皇がお出ましになると、見事な快晴に恵まれ、「天皇晴れ」といわれた。
 また昭和46年(1971)9月27日から10月14日まで御訪欧の往路、米国の要請でアラスカへ立ち寄られた際にも、雨が急に晴れて、「エンペラーウェザー」と報道された(なお、その際の御製がある)。
 さらに今上陛下が皇太子として御成婚の日(平成5年6月9日)、前夜来の雨が小降りになって午後4時頃に止み、皇居二重橋上空の雲間から太陽が現れた。そのおかげでパレードも盛大に行われ、多くの人々が、両殿下の御成婚をお祝いできた。
 しかも昨年(令和元年)10月22日、「即位礼正殿の儀」が執り行われた際も、午前中に降っていた雨が午後1時頃に止み、雲間から青空が見え、レインボーブリッジなどに虹が架かった。これらは偶然の現象かもしれないが、古来これを、天の神々が皇室の慶事を悦び、めでたい祥瑞(天瑞)を現す吉兆と信じられてきた。

(後藤真生)

 
【参考文献】(敬称略)
・所功著『皇室の伝統と日本文化』(モラロジー研究所、平成8年)、同著『「国民の祝日」の由来がわかる小事典』(PHP研究所、平成15年)、同著『天皇の「まつりごと」』(日本放送出版協会、平成21年)、同編著『昭和天皇の大御歌』(角川書店、平成31年)
・宮内庁編『昭和天皇実録』全十九冊(索引一冊を含む)(東京書籍、平成27~31年完結)
・皇室事典編集委員会編『皇室事典 令和版』(KADOKAWA、令和元年)