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大祓

おおはらい

 宮中では、日本全体の罪・穢れを祓い清める「大祓」が、毎年6月と12月の晦日(30日)に執り行われる。これには、掌典長はじめ掌典職が奉仕する。
 大祓の古例は、『日本書紀』天武天皇10年(682)紀や大宝・養老の「神祇令」および『延喜式』(祝詞式)に見え、大昔から大々的に行われてきたが、応仁の乱の後、行われ難くなった。
 それが再興されたのは、明治4年(1871)からである。大祓当日、午後2時より3時まで、まず「節折(よおり)の儀」が、皇居内の宮殿・正殿「竹の間」において行われる。これは、天皇陛下のための祓の儀式である。
 ついで、「大祓の儀」が午後3時に開始される。宮中三殿の西に建つ神嘉殿の南庭に、皇族および宮内庁・皇宮警察本部の職員などが着床すると、掌典職により祓や大祓詞の奏上などが行われる。
 なお、6月(あるいは7月)の末や12月の末には、伊勢の神宮をはじめ全国の神社などでも、大祓が恒例祭事となっており、茅の輪くぐりなどが行われる。
 
【コラム】神饌のマクワウリ
 6月30日、宮中三殿におかれては、内掌典により水無月の御神饌が供えられる。元内掌典の髙谷朝子氏によれば、そのなかに、白瓜、真桑瓜、茄子がある。
 このうち真桑瓜は瓜の一種で、各地において栽培されている。この「真桑」というのは、岐阜県真桑村(現本巣市)の地名で、当地の瓜が殊においしい。地元の伝説によれば、それを岐阜から上洛した織田信長が正親町天皇に献上したところ、6月の大祓に供えられることになったという。なお、皇居内では、今なお毎年専門の職員により栽培されている。
 平成30年10月、皇后陛下として最後のお誕生日に際し、天皇陛下の御譲位後になさりたいことの一つに、マクワウリ作りを挙げておられる。
 

「赤坂の広い庭のどこかによい土地を見つけ、マクワウリを作ってみたいと思っています。こちらの御所に移居してすぐ、陛下の御田の近くに一畳にも満たない広さの畠があり、そこにマクワウリが幾つかなっているのを見、大層懐かしく思いました。頂いてもよろしいか陛下に伺うと、大変に真面目なお顔で、これはいけない、神様に差し上げる物だからと仰せで、六月の大祓の日に用いられることを教えて下さいました。大変な瓜田に踏み入るところでした。それ以来、いつかあの懐かしいマクワウリを自分でも作ってみたいと思っていました。」(宮内庁HPより)

 

(後藤真生)

 
【参考文献】(敬称略)
・髙谷朝子著『宮中賢所物語』(ビジネス社、平成18年→河出文庫、平成29年)
・所功著『天皇の「まつりごと」』(日本放送出版協会、平成21年)
・皇室事典編集委員会編『皇室事典 令和版』(KADOKAWA、令和元年)
・宮内庁HP「皇后陛下お誕生日に際し(平成30年)」(https://www.kunaicho.go.jp/page/kaiken/show/21
・岐阜県農政部農産物流通課「まくわうり」(HP「岐阜の極み」http://gifu-kiwami.jp/products/765/
・國學院大學伝統文化リサーチセンター「おはらいの文化史3 『延喜式』巻八」(http://www2.kokugakuin.ac.jp/kaihatsu/oharai/m_03.html