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信任状捧呈式

しんにんじょうほうていしき

 新任の外国大使が自国の元首から託された信任状を、天皇陛下に捧呈する儀式。日本の元首に相当するのは天皇であることが世界中の国々から公認されている。そのため、信任状は必ず天皇陛下宛となっている。儀式は、大使の来日早々、皇居宮殿の正殿「松の間」で行われる。
 当日、大使夫妻と随行員の送迎には、大使の希望に沿い、東京駅から宮殿のお車寄せまで、馬車を差し廻されることが多い。ただ、今年(令和2年)6月24日から再開された信任状捧呈式に際しては、新型コロナウイルス感染拡大防止を考慮して、見物人が密集しないよう自動車での送迎となった。
 大使夫妻と随行員が宮殿の南車寄に到着し、正殿「松の間」に入ると、天皇陛下がお出ましになる。そこで、大使が「口上」(ご挨拶)を申し上げ、前任者の解任状とともに信任状を差し出す。すると、天皇陛下は、傍に立つ外務大臣に信任状を渡された後、相手国元首の様子などをお尋ねになり、大使と言葉を交わされる。この儀式は、憲法上の国事行為であるから、天皇陛下のみがお出ましになる。そのため約1ヶ月後、天皇陛下は皇后陛下とご一緒に、大使夫妻を「茶会」(軽食)に招かれ、相手国へ訪問された時の印象をお話しになるなど、丁重に接遇される。
 捧呈された信任状が宮殿表御座所の執務室(菊の間)へ届けられると、天皇陛下は直接ご覧になり、認証を意味する「認」の印を押され、毛筆で親署(今上陛下の場合、御名「徳仁」とご記入)なさる。信任状は、このようなご決裁を経てから、外務省へ回される。
 
【コラム】皇室の馬車
 古来、日本に騎馬はあっても、馬車は幕末まで無かった。明治4年(1871)、明治天皇が4人乗り馬車にお乗りになってから、馬車による御移動が多くなった。
 今日では、御料車と呼ばれる自動車による御移動が多い。けれども、皇室の重要儀式が行われる際には、特別な儀装馬車が使用される。
 現存する儀装馬車は1号から4号まである。今上陛下は、昭和55年(1980)の成年式や平成3年(1991)の立太子の礼で儀装馬車3号に乗られ、令和の御代替わりに伴う「即位礼及び大嘗祭後神宮に親謁の儀」では、2号にお乗りになった。
 一方、外国大使の信任状捧呈式の日には、大使夫妻を送迎するために儀装馬車4号が使用されている(随行員には普通馬車が用いられる)。
 なお、令和元年11月10日に行われた「祝賀御列の儀」では、儀装馬車ではなく、新調されたオープンカー(トヨタ「センチュリー」の改造車)が用いられた。
 

(後藤真生)

 
【参考文献】(敬称略)
・所功著『天皇の「まつりごと」』(日本放送出版協会、平成21年)
・皇室事典編集委員会編『皇室事典 令和版』(KADOKAWA、令和元年)
・宮内庁HP「信任状捧呈式」
https://www.kunaicho.go.jp/about/gokomu/kyuchu/shinninjo/shinninjo01.html
・THE PAGE「即位の礼と由緒ある「11月10日」 祝賀パレードは平成が初」
https://news.yahoo.co.jp/articles/ba94c1b53fb796e503cee7ee5d53b4dba0436bac?page=1