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明治天皇例祭

めいじてんのうれいさい

 明治天皇例祭は、明治天皇の崩御された7月30日に、皇霊殿で執り行われる。平年の例祭は小祭であるが、他の小祭と異なり、天皇陛下と皇太子殿下の御拝礼だけでなく、皇后陛下や皇太子妃殿下、宮家の成年皇族方も参列して拝礼される。また当日、陵所においても掌典により祭祀が行われる。
 宮中では、明治41年(1908)『皇室祭祀令』公布以来、初代神武天皇の崩御伝承日(新暦4月3日)と先帝の崩御相当日に行われる格別な大祭とは別に、「先帝以前三代」の天皇の崩御相当日に、毎年の例祭(小祭)、および式年ごとの式年祭(大祭)が行われてきた。
 「先帝以前三代」とは、令和2年(2020)現在、平成の天皇が上皇として御健在であるから、昭和天皇よりも前の三代(孝明天皇・明治天皇・大正天皇)を指す。
 なお、皇太后(先帝より後に崩御された皇后)についても、例祭と式年祭がある。今年(令和2年)の6月16日は、香淳皇后が平成12年(2000)の崩御から20年に当たり、式年祭が行われた。
 ちなみに、明治天皇の御誕生日は、新暦の11月3日であり、明治時代には天長節として奉祝されていた。しかも、この日を再び祝日にしてほしいとの要望が大正初年から民間運動として盛んになった。やがて昭和2年(1927)に「明治節」と称する祝日が定められ、宮中では「明治節祭」という小祭が行われるようになったのである。
 
【コラム】明治神宮御鎮座百年
 明治45年(1912)7月30日に天皇が崩御された直後から、「明治大帝」を祀る神宮の創建を求める声が各界各層から大きくなり、宮内省・政府・国会に要望が提出された。その結果、大正4年(1915)、天皇の御裁可を賜わった。
 その造営工事は、内務省が内苑を担当したが、外苑の造営や植林は、民間有志により結成された奉賛会が大きな働きをしている。全国各地から献金や献木が寄せられ、とりわけ青年奉仕団が全国から集い、百年後を見据えた計画に基づき、造営工事や植林が進められた。やがて大正9年(1920)の11月1日、「官幣大社明治神宮」の鎮座祭が行われるに至ったのである。
 明治神宮は、昭和20年(1945)に空襲で大部分の社殿が焼失したけれども、同33年に再建された。そして令和元年(2019)8月に本殿遷座祭が執り行われ、今年(令和2年)の11月1日に鎮座百年祭が行われる。
 明治神宮では毎年、鎮座記念祭が行われる。天皇陛下をはじめ皇族の方々は十年ごとに、鎮座記念祭へ御歌を御奉納になっている。今上陛下は皇太子の頃から献詠され、平成12年(2000)、「東京に豊かな緑のこしつつ明治の杜は生命はぐくむ」という御歌を詠んでおられる。
 

(後藤真生)

 
【参考文献】(敬称略)
・所功著『天皇の「まつりごと」』(日本放送出版協会、平成21年)
・明治神宮編『明治神宮叢書』第13巻 造営編(2)・第16巻 奉賛編(国書刊行会、平成16・17年)
・山口輝臣著『明治神宮の出現』(吉川弘文館、平成17年)
・小柳左門著『皇太子殿下のお歌を仰ぐ』(展転社、平成31年)
・明治神宮HP(https://www.meijijingu.or.jp/