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山の日

やまのひ

 「山の日」は8月11日である(ただ令和2年に限り、予定された東京オリンピックの関係で10日に移動されている)。この祝日は、平成26年(2014)、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」(「国民の祝日に関する法律」)と定められた。その日取の歴史的な由緒は不明。地域により山開きの日だとの説もあるが、新暦のお盆(15日)まで連休にしやすくしたのだと言われている。
 この祝日が初めて施行された平成28年には、「山の日」記念全国大会が開かれ、記念式典に当時の皇太子殿下(今上陛下)が臨席され、次のような御言葉を賜った。

「我が国は、国土の約7割を山地が占めており、私たち日本人は、古くから山に畏敬の念を抱き、森林の恵みに感謝し、自然と共に生きてきました。……次代を担う子供たちに、山のすばらしさや厳しさ、山の恩恵への感謝の気持ちなどをしっかりと引き継いでいくことが大切であり、「山の日」が明るく豊かな「山の未来」を創造する第一歩となることを願っています。私自身、山に登り始めて50年ほどになりますが、山に登るたびに新しい発見や新たに学ぶことがあり、山の魅力は尽きることがありません。」(宮内庁HP参照)。

 

【コラム】今上陛下と登山
 今上陛下は、満5歳(昭和40年)の頃、当時の皇太子殿下(現上皇陛下)に連れられて軽井沢の離山へ登られてから、50年以上にわたり登山を続けておられる。それによって、健脚を鍛え続けてこられたのだとも思われる。平成3年(1991)『山岳修験』へのご寄稿をはじめ、『岳人』『山と渓谷』『山岳』といった学術雑誌や登山専門誌などに、論文や随想・写真を発表されたこともある。
 陛下にとって「信仰の山への登山は、過去を偲びながら歩む生きた歴史体験」なのだといわれる(「修験の山を訪ねて」『山岳修験』、平成3年)。このような「歴史体験」を詠まれた御歌に、昭和55年(1980)の「ももとせの昔帝の見ましけむ 白山にして我登りゆく」がある。曾祖父の帝が明治11年(1878)に北陸へ巡幸されてから約百年後、白山へ登られたことにちなむ御歌である。
 そうした登山のたびに日本の美しい自然を感じられ、写真撮影や自然観察にも励んでおられる。平成9年(1997)ご執筆「山の花随想」によれば、ご幼少の頃から御両親と共に、また御結婚後は妃殿下と共に、植物観察の面白味も深めてこられた。
 山々に対する敬虔・感謝・親しみなどのお気持を抱かれる陛下は、富士山が「世界文化遺産」に登録された翌年(平成26年)、『岳人』の特別寄稿文を、「富士山の自然が守られ、今後何世代にもわたり、人々が富士山の美しさを享受できるよう心から願わずにはいられない」と結んでおられる。

(後藤真生)

【参考文献】(敬称略)
・徳仁親王「修験の山を訪ねて」(『山岳修験』第7号、平成3年)、同「山の花随想」(『岳人』600号、平成9年)、同「富士山に登って」(『岳人』805号、平成26年)
・宮内庁HP「皇太子殿下のおことば」(第1回「山の日」記念全国大会記念式典、平成28年8月11日)(https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/2#45
・所功著『日本学ひろば88話』(コミニケ出版、令和2年)