全国戦没者追悼式
全国戦没者追悼式は、毎年8月15日に日本武道館で行なわれる、戦没者を追悼して平和を祈念する政府主催の式典である。当日、天皇陛下は皇后陛下と共に臨席され、「全国戦没者之霊」と大書された標柱の前に立たれて、正午の時報を合図に、参列者と御一緒に1分間の黙祷を捧げられる。続いて、「おことば」を述べられる。
この式典が政府の主催で行なわれるようになったのは、昭和38年(1963)からである。それ以来、昭和・平成・令和の天皇陛下は、毎年の式典にお出ましになり、一貫して深い追悼の念を表してこられた。今上陛下は、平成9年(1997)の歌会始(御題「姿」)で、「日嗣の皇子(ひつぎのみこ)」として次の御歌を披露されている(宮内庁HP参照)。
人みなは姿ちがへどひたごころ戦(いくさ)なき世をこひねがふなり
ちなみに、毎年の春(4月)と秋(10月)、靖國神社の例大祭は勅使を差遣され、天皇陛下からの幣物奉納や祭文奏上が行われている。
【コラム】全国戦没者追悼式における「おことば」
昭和天皇以来、歴代の天皇陛下は、全国戦没者追悼式への御臨席に極めて強いお気持を抱いておられる。例えば昭和63年(1988)、前年9月に癌の手術を受け御静養が続く中、式典当日、那須の御用邸からヘリコプターで東京へ戻られ、最後の御言葉を賜った。また昭和天皇の御遺志を受け継がれた上皇陛下は、沖縄や広島・長崎などを訪れ、全国戦没者追悼式に毎年お出ましになり、追悼を真摯に努めてこられた。
さらに今上陛下は、このような強い御心となさりようを心に留められ、令和元年(2019)の全国戦没者追悼式で、次のような「おことば」を賜った。
本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
終戦以来74年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。
戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
なお、今年の8月15日は、コロナ禍予防のために参列者は大幅に制限されるが、政府主催で両陛下御臨席による式典は例年どおり斎行される予定である。
【参考文献】(敬称略)
・所功著『靖國の祈り遙かに』(神社新報社、平成14年)、同著『天皇の「まつりごと」』(NHK出版新書、平成21年)
・宮内庁HP「平成九年歌会始御製御歌及び詠進歌」(平成9年)
(https://www.kunaicho.go.jp/culture/utakai/pdf/utakai-h09.pdf)
・宮内庁HP「天皇陛下のおことば」(全国戦没者追悼式、令和元年8月15日)
(https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/48#184)