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親任式と認証官任命式

しんにんしきとにんしょうかんにんめいしき

 親任式は、天皇陛下が内閣総理大臣(首相)と最高裁判所長官を任命される儀式である。首相は、皇居宮殿の「松の間」において、前任首相と衆参両院議長の立会いのもと、天皇陛下から「任命」の御言葉を賜わり、侍立する前任首相から官記(任命書)を手渡される。また最高裁判所長官は内閣で指名されると、参内して天皇陛下から「親任」され、首相から官記を渡される。
 首相は親任式に先立ち、衆議院と参議院で多数決により「内閣総理大臣」として指名される。すると直ちに御裁可を仰ぐ文書が内閣で作成され、宮内庁を通じて上奏される。天皇陛下は、宮殿の執務室でこの文書を御覧になり、「可」と刻まれた裁可の小印を押され、官記に御名を親署される。
 今年(令和2年)9月16日、今上陛下の御即位後初となる親任式が執り行われた。その際、今上陛下は菅義偉新首相に対し「内閣総理大臣に任命します」との御言葉を賜わり、安倍晋三前首相から官記を手渡された。
 しかも、それに続いて行われた「認証官任命式」で、新首相により指名された国務大臣が、天皇陛下から「認証」され、その一人一人に対して「重任ご苦労に思います」との御言葉を賜わった。
 認証官任命式は、国務大臣以外に、副大臣(内閣官房の副長官を含む)および人事官・検査官・公正取引委員会委員長・原子力規制委員会委員長・宮内庁長官・侍従長・上皇侍従長・特命全権大使・同公使・最高裁判所判事・高等裁判所長官・検事総長・次長検事・検事長の新任に際しても行われる。
 この「親任式」や「認証官任命式」は、現行憲法により国家・国民統合の象徴と定められる天皇が、国家・国民の総意を体して行われる「国事行為」である。
 
【コラム】国会開会式における「お言葉」
 天皇陛下が出される詔書により国会の召集が公示される(これは国事行為)と、衆議院議長が主宰する国会開会式に、天皇陛下が招待を受けて臨席され「お言葉」を賜わる。このような国会開会式への御臨席は「公的行為」と解されている。
 国会開会式の当日、天皇陛下は、国会議事堂内の参議院本会議場にある御席(いわゆる玉座)へ案内され、衆議院議長の式辞が済んだ後、「お言葉」を読みあげられ、それを衆議院議長に手渡される。
 今上陛下は、御即位後、令和元年(2019)8月1日の第199回国会開会式へ初めてお出ましになった。この9月17日に行われた国会開会式では、次のような「お言葉」を賜わった(宮内庁HP参照)。
「本日、第202回国会の開会式に臨み、全国民を代表する皆さんと一堂に会することは、私の深く喜びとするところであります。/ここに、国会が、当面する内外の諸問題に対処するに当たり、国権の最高機関として、その使命を十分に果たし、国民の信託に応えることを切に希望します。」

(後藤真生)

【参考文献】(敬称略)
・所功著『天皇の「まつりごと」』(日本放送出版協会、平成21年)
・宮内庁HP「親任式」(https://www.kunaicho.go.jp/about/gokomu/kyuchu/others/shinninshiki.html
「認証官任命式」(https://www.kunaicho.go.jp/about/gokomu/kyuchu/ninshokan/ninshokan.html
「第202回国会開会式」(https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/61#232
 
※参考
・宮内庁HP「平成25年9月 粟・陸稲お手刈り(皇居内生物学研究所)」
https://www.kunaicho.go.jp/activity/gokinkyo/01/h25-1223-sanju5.html#awaokabo