• ミカド文庫について
  • 歴代天皇の略伝
  • 皇室関係の文献目録
  • 皇室関係の用語辞典
  • 今上陛下の歩み

大正天皇例祭

たいしょうてんのうれいさい

 大正天皇例祭は、大正天皇の崩御相当日(12月25日)に皇霊殿で行われる小祭である。
 明治41年(1908)公布の「皇室祭祀令」によれば、「先帝以前三代」と「先后」の祭は、毎年、「小祭」として執り行われる。この「先帝以前三代」とは、現時点(令和2年12月21日)では、孝明天皇・明治天皇・大正天皇を指す。
 なお、前三代の天皇についても、天皇の崩御から3年・5年・10年・20年・30年・40年・50年・100年・それ以後100年ごとの崩御相当日に行われる「式年祭」の場合は、「大祭」として行われる。大正天皇の百年の式年祭は、令和8年(2026)12月25日に予定されている。

【コラム】大正天皇の御製(漢詩と和歌)
 大正天皇(明治12年・1879~大正15年・1926)は、和歌のみならず漢詩にもすぐれておられた。現在公表されている漢詩の数は1400首近く、歴代天皇のなかでも際立って多い。
 明治天皇と柳原愛子との間にお生まれになった嘉仁親王(幼称明宮、のち大正天皇)は、東宮侍講の本居豊穎・三島毅・三田守真などから、和歌・漢詩・フランス語などの御進講を受けられた。一方、全国各地への行啓時など、折にふれて漢詩や和歌を詠まれた。やがて天皇となられてからも、数多く御製を作っておられる。
 例えば、大正3年(1914)の元旦、天皇(34歳)が三皇子(裕仁親王12歳・雍仁親王11歳・宣仁親王8歳)に示された御製「歳朝示皇子」は、左の通りである。

改暦方逢萬物新 (改暦、方に逢ふ、萬物の新たなるに)
戒兒宜作日新人 (兒を戒む、宜しく日新の人と作るべし)
経来辛苦心如鐡 (辛苦を経来たりて、心、鐡の如し)
看取梅花雪後春 (看取せよ、梅花雪後の春)
[謹解](所功氏試訳参照)
(起句)新しい年が明けて、物みなすべてが新しくなった思いがする。
(承句)この機会に子等に注意をしておきたい。年が改まったときだけ新しくなるのではなくて、毎日毎日少しずつでも新しくなる人であるようにと。
(転句)人間というものはいろいろな悩み苦労を通り抜けて、はじめて鉄のような何物にもくじけない魂を持つようになるのである。
(結句)あの梅の花が、厳しい雪の寒さののちに、はじめてあのように香り高く咲き誇るのだということをよくよく考えてほしい。

【参考文献】(敬称略)
・木下彪謹解『大正天皇御製詩集』(明徳出版社、昭和35年)
・西川泰彦著『天地十分春風吹き満つ―大正天皇御製詩拝読』(錦正社、平成18年)
・石川忠久編著『大正天皇漢詩集』(大修館書店、平成26年)
・岡野弘彦解説『大正天皇御集 おほみやびうた』(明徳出版社、平成14年)
・所功著『天皇の「まつりごと」』(日本放送出版協会、平成21年)、同著『歴代天皇の実像』(モラロジー研究所、平成21年)、同「皇室における漢詩と和歌」(『吟道せつなん』155号、平成27年)
・皇室事典編集委員会編『皇室事典 令和版』(KADOKAWA、令和元年)