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新年祝賀の儀

しんねんしゅくがのぎ

 新年祝賀の儀は、日本国憲法第7条に天皇の国事行為として定められている「儀式を行ふこと」として元日に実施される。昭和28年(1953)に戦前の「新年朝賀の儀」の内容が改められて以来、今も次のように行われている。
 元日の午前10時から、まず皇居の宮殿「松の間」において成年皇族・内閣関係者・国会関係者が、天皇陛下と皇后陛下に対して新年の祝賀を申し上げる。ついで宮殿「竹の間」において司法の裁判所関係者などが、さらに再び「松の間」で認証官と各省庁の事務次官および全国都道府県の知事・議長などが、両陛下に対して祝賀を申し上げる。また午後2時半からは、宮殿「松の間」において世界百数十カ国の駐日各国大使公使(配偶者同伴)などが、両陛下に対して新年の祝賀を申し上げる。
 それぞれ代表者からの賀辞に対して、天皇陛下からお言葉を賜るが、午後の儀においては、両陛下がずっとお立ちのまま各国代表夫妻と簡単なご挨拶を交わされる。
 その上、天皇陛下は未明に綾綺殿で黄櫨染御袍を召され、5時半から神嘉殿の南階下庭上において元旦四方拝を行われ、引き続き宮中三殿において歳旦祭を行われる(ミカド文庫「四方拝」参照)。また午前も午後も儀式の合間に未成年皇族や元皇族及び旧奉仕者などから祝賀を受けられるから、陛下はほとんどお休みになる間もないようである。

【コラム】令和3年(2021)新年の御言葉
 元日の新年祝賀の儀に関連して、戦後昭和23年(1948)からいわゆる一般参賀が始まり、同44年から新宮殿の長和殿ベランダへ天皇陛下と成年皇族がお出ましになる形の公的恒例行事となり、平成から令和へと受け継がれてきた。しかし、令和3年(2021)の新年一般参賀は新型コロナウイルス禍の自粛中に配慮して取りやめられた。それに代えて、元日朝、天皇陛下のビデオメッセージが宮内庁HPに公開された。その中で、次のように仰せられている。

私たち人類は、これまで幾度も恐ろしい疫病や大きな自然災害に見舞われてきました。しかし、その度に、団結力と忍耐をもって、それらの試練を乗り越えてきたものと思います。今、この難局にあって、人々が将来への確固たる希望を胸に、安心して暮らせる日が必ずや遠くない将来に来ることを信じ、皆が互いに思いやりを持って助け合い、支え合いながら、進んで行くことを心から願っています。
即位以来、私たちは、皆さんと広く接することを願ってきました。新型コロナウイルス感染症が収まり、再び皆さんと直接お会いできる日を心待ちにしています。

 なお、恒例の一般参賀では、天皇陛下のお言葉のみであるが、今回は皇后陛下もお言葉を添えられ、「この1年、多くの方が本当に大変な思いをされてきたことと思います。今年が、皆様にとって少しでも穏やかな年となるよう心からお祈りいたします。」と述べておられる。

(後藤真生)

【参考文献】(敬称略)
・所功著『天皇の「まつりごと」』(日本放送出版協会、平成21年)
・皇室事典編集委員会編『皇室事典 令和版』(KADOKAWA、令和元年)
・宮内庁HP「新年ビデオメッセージ(令和3年1月1日)」
https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/86#276