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宮中歌会始

きゅうちゅううたかいはじめ

 明治初年から恒例となった宮中正月行事の一つ。天皇陛下の御製、皇后陛下の御歌をはじめ、成年皇族方の御歌、および召人・選者の歌や一般詠進者の預選歌(入選歌)が丁寧に読み上げられる。幕末に中断した「歌御会始」が明治2年(1869)に復興され、天皇陛下の思召しにより、同7年以降、一般国民の詠進(勅題を詠み込んだ和歌の献上)が認められた。
 戦後は明治21年設置の「御歌所」が廃止されたけれども、民間の歌人を選者とする「歌会始委員会」が設けられ、1月中旬の午前10時半から、皇居の宮殿「松の間」で行われてきた。
 歌会始に先立ち、前年の歌会始直後に新しい御題が公表され、詠進要領に則った一般国民(外国在住者も含む)から9月末日までに宮内庁へ送られる詠進歌の中から、選者により入選作10首と佳作10首が選ばれる。その結果は、天皇陛下に上奏された後、12月に内定者へ通知される。
 当日、天皇陛下と皇后陛下が中央正面のお席に着かれ、その両側に成年皇族方が並ばれる。式場の中央には披講者(読み上げ役)数名が、その後部に召人・選者・入選者、その左右両脇に陪聴者(三権の代表者、各界から推薦された人々など百数十名)が、それぞれ席に着く。ついで平安以来の雅な読み方で披講される。その順番は、入選者・召人・選者、皇族代表(毎年交替)、皇嗣・同妃両殿下と進み、皇后陛下の御歌2回、さらに天皇陛下の御製は3回披講される。

【コラム】平成の宮中歌会始全歌集
 宮中歌会始に関する最近の書籍として、宮内庁編『宮中歌会始全歌集 歌がつむぐ平成の時代』(東京書籍、平成31年)がある。その序文にある通り、本書は、「皇室と国民を結ぶ平成の宮中歌会始の集大成」である。平成3年(1991)から同31年までの歌会始で読み上げられた和歌が全て掲載されている。
 令和最初の歌会始は昨年(2020)1月16日に行われ、御題「望」を詠み込まれた御製と御歌は次の通りである(宮内庁HP参照。同HPには、昭和22年以降の御題とともに、御製や御歌など、一部英訳も掲載されている)。

(御製)学舎にひびかふ子らの弾む声 さやけくあれとひたすら望む
(御歌)災ひより立ち上がらむとする人に 若きらの力希望もたらす

 なお、今年の歌会始はコロナ禍への対応により、3月ころに延期の予定と伝えられている。

(後藤真生)

【参考文献】(敬称略)
・宮内庁編『宮中歌会始全歌集 歌がつむぐ平成の時代』(東京書籍、平成31年)
・所功著『天皇の「まつりごと」』(日本放送出版協会、平成21年)
・皇室事典編集委員会編『皇室事典 令和版』(KADOKAWA、令和元年)
・宮内庁HP「歌会始」(https://www.kunaicho.go.jp/culture/utakai/utakai.html
・宮内庁HP「お題一覧」(https://www.kunaicho.go.jp/culture/utakai/odai.html