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「東日本大震災」に際しての御言葉

令和3年3月11日

 平成23年(2011)3月11日午後2時46分に突発した地震による「東日本大震災」は、「貞観大地震」(869)に匹敵する大災害である。津波や福島原子力発電所における爆発まで伴い、1万6千人近い人々が亡くなり、約2千5百人が行方不明である(令和3年3月10日時点)。この大惨事に直面し、平成の天皇(現上皇陛下)は、諸事情を真剣に熟慮され、5日後にビデオを通じて次のような御言葉を賜った(宮内庁HPにビデオと全文掲載)。

「この度の東北地方太平洋沖地震は、マグニチュード9.0という例を見ない規模の巨大地震であり、被災地の悲惨な状況に深く心を痛めています。地震や津波による死者の数は日を追って増加し、犠牲者が何人になるのかも分かりません。一人でも多くの人の無事が確認されることを願っています。また、現在、原子力発電所の状況が予断を許さぬものであることを深く案じ、関係者の尽力により事態の更なる悪化が回避されることを切に願っています。

現在、国を挙げての救援活動が進められていますが、厳しい寒さの中で、多くの人々が、食糧、飲料水、燃料などの不足により、極めて苦しい避難生活を余儀なくされています。その速やかな救済のために全力を挙げることにより、被災者の状況が少しでも好転し、人々の復興への希望につながっていくことを心から願わずにはいられません。そして、何にも増して、この大災害を生き抜き、被災者としての自らを励ましつつ、これからの日々を生きようとしている人々の雄々しさに深く胸を打たれています。

自衛隊、警察、消防、海上保安庁を始めとする国や地方自治体の人々、諸外国から救援のために来日した人々、国内の様々な救援組織に属する人々が、余震の続く危険な状況の中で、日夜救援活動を進めている努力に感謝し、その労を深くねぎらいたく思います。

今回、世界各国の元首から相次いでお見舞いの電報が届き、その多くに各国国民の気持ちが被災者と共にあるとの言葉が添えられていました。これを被災地の人々にお伝えします。

海外においては、この深い悲しみの中で、日本人が、取り乱すことなく助け合い、秩序ある対応を示していることに触れた論調も多いと聞いています。これからも皆が相携え、いたわり合って、この不幸な時期を乗り越えることを衷心より願っています。

被災者のこれからの苦難の日々を、私たち皆が、様々な形で少しでも多く分かち合っていくことが大切であろうと思います。被災した人々が決して希望を捨てることなく、身体を大切に明日からの日々を生き抜いてくれるよう、また、国民一人びとりが、被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ、被災者と共にそれぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを心より願っています。」

 この最後の「これからも長く心を寄せ……見守り続けていく」大御心を承け継がれた天皇陛下は、令和3年(2021)3月11日、国立劇場で開催された東日本大震災十周年追悼式に臨席され、懇篤な御言葉を仰せられた。その全文は、宮内庁HPに和文と英文で掲載されている。

【参考文献】(敬称略)
・宮内庁HP「東北地方太平洋沖地震に関する天皇陛下のおことば(平成23年3月16日)」
 (https://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/okotoba/tohokujishin-h230316-mov.html
・宮内庁HP「東日本大震災十周年追悼式」(https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/86#286