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廣池千九郎博士の皇室研究

令和元年7月21日

              道徳科学研究センター 橋本富太郎
 天皇は、憲法に「日本国の象徴」とされる存在ですが、廣池千九郎博士の提唱した道徳科学「モラロジー」においても極めて重要な位置にあります。
 廣池博士は、少年時代に学んだ私塾の教師・小川含章から大きな人格的感化を受け、同時に皇室から受けてきた恩恵の大きさを教えられました。やがて師の尊王の遺志を継ぐため、学問を志し、その成果を世に問うていきます。
 皇室に関する最初の本格的な著述は、27歳のときに刊行した『皇室野史』(明治26年)という歴史書です。戦国から幕藩体制期における皇室と武家との関係を手掛かりに、国民の持つべき道徳を説くものでした。続いて明治30年頃、恩師の井上頼囶から託された皇室の万世一系の原因究明に邁進し、答えを歴代天皇の道徳性の高さに見出します。それを発表し、合わせて伊勢神宮を概説したのがその名も『伊勢神宮』(明治41年)です。
 こうして「皇室」と「道徳」との不可分の関係を明かにした廣池博士は、主著『道徳科学の論文』(昭和3年)によって、理論体系を完成させました。皇室を世界に五つあるという「道徳系統」の一つに数え、三つの恩人の系統のうち最も重要な「国家伝統」に位置づけ、国際社会および日本人の道徳形成における存在意義を明かにしたのでした。
 現在、廣池千九郎記念館では、御即位の慶事に合わせて企画展「廣池千九郎の皇室研究と奉仕の事跡」が開催中です。廣池博士の皇室研究の全容がご覧いただけると存じます。