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ツミ・ケガレを祓い清める

令和2年9月1日

 「新型冠状病毒(コロナウイルス)」の猛威は、いったん消え去ったかにみえる。しかし、おそらく第二波・第三波が襲って来ることは、「一九一八年パンデミック」(いわゆるスペイン風邪)が一年半余り続いた例に照らしても、避け難いと思われる。
 しかし、高齢者の私には、直接役立つことが何もできない。ただ、StayHomeでも為しうることは“困った時のカミ・ホトケ頼み”だと思い、四月から週一回「袚詞(はらえことば)」と「心経」の書写を続けている。
 そのうち「般若心経」については前々号で言及したから、今回は「袚詞」について略述しよう。かくいう「袚詞」は、天武天皇(在位六七三~六八六)朝から六月と十二月に斎行の時に唱えられてきた長い「大袚詞」と異り、次のごとく極めて簡略である。

「掛けまくも畏(かしこ)き伊邪那岐大神(いざなきのおおかみ)、筑紫の日向(ひむか)の橘の小戸(おど)の檍原(あはぎはら)に御禊袚(みそぎはら)へ給ひし時に生(な)り坐(ま)せる袚戸(はらえど)の大神等(たち)、諸々(もろもろ)の禍事(まかごと)・罪(つみ)・穢(けがれ)有らんをば袚へ給ひ清め給へ、と白す事を聞こし食(め)せと畏み畏み白す。」

 この文言は、記紀神話をふまえて、大正三年(一九一四) 内務省令「神社祭式」で定められ、昭和二十三年(一九四八)神社本庁で少し改め、社頭で修祓(おはらい)に唱える例文とされている。その成立経緯や内容解釈には、諸説あるという(深尾芳也氏「袚詞に関する覚書」神社本庁『神道教学研究所紀要』九号、平成十六年参照)。
 ただ、大まかな趣意は、人為的なツミも自然的なケガレも「袚戸の大神等」に「袚へ給ひ清め給へ」と真剣に祈り申せば、誰でも必ず元気を取り戻すことができる、という日本古来の純朴な信仰の表白にほかならない。
 なお、歴史の愛好者としては、「筑紫(九州)の日向の橘の小戸の檍原」とは、どこのどんな所か、また「袚戸の大神等」とは、どのような神々か気になるが、その考証は読者諸賢に任せよう。

(所  功)