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全国豊かな海づくり大会

ぜんこくゆたかなうみづくりたいかい

 「全国豊かな海づくり大会」(以下、「海づくり大会」)は、水産資源を保護・管理し、海や湖沼・河川の環境を保全することの大切さを訴え、「つくり育てる漁業」を推進し、日本漁業の振興と発展を図ることを目的として、昭和56年(1981)から行われている。
 これは、ハゼの研究者として海に関心の深い昭和時代の皇太子殿下のご意向を汲んで始められたといわれる。そこで、第1回大会から皇太子殿下が妃殿下と共に行啓され、御即位後もお揃いで御臨席を続けて来られた。それが令和の御代にも引き継がれている。
 「海づくり大会」の開催地は、全国都道府県の持ち回りによる。大会は、海に面していない内陸県(滋賀県・岐阜県・奈良県など)でも行われてきた。
 天皇陛下は皇后陛下と共に、大会前後、開催地の周辺を御視察になり、大会当日、当該地方に縁の深い稚魚や稚貝を放流され、式典で御言葉を賜わる。
 令和元年(2019)9月8日、秋田県秋田市において開催された第39回大会では、天皇陛下より、「豊かな海の環境を保全するとともに、水産資源を保護・管理し、海の恵みと美しさを次世代に引き継いでいくことは、私たちに課せられた大切な使命である」との「おことば」を賜わった(宮内庁HP参照)。ただ今年(令和2年)の第40回大会は、宮城県石巻市において開催予定であったが、新型コロナウイルスの影響により、来年に見送られている。
 
【コラム】都内・地方への行幸啓
 天皇陛下と皇后陛下は、公式にお出ましになる機会が多く、全国各地を訪ねられる。都内や地方への行幸啓には、恒例のものと臨時のものとがある。
 象徴天皇の国事行為として、国会の開会式への御臨席がある。1月召集の通常国会、臨時国会、衆議院総選挙直後の特別国会の開会式に、単独でお出ましになり、御言葉を賜わる。
 天皇陛下と皇后陛下がお揃いの恒例行幸啓としては、全国戦没者追悼式・全国植樹祭・国民体育大会・全国豊かな海づくり大会・国民文化祭・日本学士院と日本藝術院の各賞授賞式・日本国際賞や国際生物学賞の授賞式がある。
 また、都内の福祉施設への御訪問も、平成の御代から恒例化されている。これは毎年3回で、5月は「こどもの日」にちなみ保育園や養護施設へ、9月は「敬老の日」にちなみ老人介護施設へ、12月は「障害者週間」にちなみ障害者支援施設などへ訪ねておられる。
 さらに、皇后陛下の恒例行啓として、日本赤十字社の全国赤十字大会への御臨席がある。昭憲皇太后が明治10年(1877)に博愛社(のち「日本赤十字社」)の創設に尽力された後を承け、大正・昭和・平成・令和の皇后陛下は、同社の名誉総裁を務めておられる。
 臨時の行幸としては、福祉・教育・学術・芸術・スポーツなどに関係する公的団体の記念式典への御臨席がある。また、被災地などへのお見舞いも、平成の両陛下から積極的に取り組んでこられた。

(後藤真生)

【参考文献】(敬称略)
・所功著『「国民の祝日」の由来がわかる小事典』(PHP研究所、平成15年)、同著『天皇の「まつりごと」』(日本放送出版協会、平成21年)
・渡邉允著『天皇家の執事 侍従長の十年半』(文藝春秋、平成23年)
・宮内庁HP「第39回全国豊かな海づくり大会」(「主な式典におけるおことば(令和元年)」https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/48#185