• ミカド文庫について
  • 歴代天皇の略伝
  • 皇室関係の文献目録
  • 皇室関係の用語辞典
  • 今上陛下の歩み

「国際雑穀年」に「粟」の振興を考える

令和5年11月1日

                                      所  功
 今年の夏は暑い日が長引き、雨も激しかったが、実りの秋を迎えて、郷里などから新米や果物を送ってもらい、身も心も力づけられている。しかし、国内でも海外でも、食糧不足どころか食料危機に瀕している地域が急増中だという。
 それを克服するには、様々な工夫と努力を要する。そう思って少し調べてみると、今年は国連の定めた「国際雑穀年」であり、「雑穀の気候耐性と栄養面での価値に対する認識を高めるために・・・雑穀の持続可能な生産と消費拡大を通じた、多様で、バランスのとれた健康な食生活を提唱して」いる(国際農研)。
 その「雑穀」(millet ミレット)とは、アワ・ヒエ・キビなど(日本雑穀協会)であり、世界の主要な三大穀物(米・小麦・玉蜀黍〈トウモロコシ〉)よりも「栄養価が高い」という(FAO)。これらは『古事記』『日本書紀』などにみえる米・麦・粟・稗(黍)・豆、いわゆる「五穀」にほかならない。
 ところが、戦後の日本では、国策として水田の米作りに力を入れる反面、畑作の雑穀を作る農家が急に減ってしまった。ところが、宮中では、毎年11月の新嘗祭と一代一度の大嘗祭に、お米と粟の御飯・御粥を重要な神饌としておられ、そのために宮内庁から全国に精米(1升)と精粟(5合)の献納を打診されてるが、それに応えて粟を出せる都道府県は、今や半数という残念な状況にある(添付一覧参照)。
 では、どうしたらよいのだろうか。数年来の管見を申せば、日本では縄文以来の粟作などを、弥生以来の米作が普及しても棄て去らず、平常食の米と共に、非常食の粟なども大切に作り補助食としてきたこと、その知恵を宮中では今なお大事に守り続けておられること、そのような事実を理解すれば、とりわけ宮中祭祀を手本とする全国の神社や有志の家庭で、新穀祭などにお米だけでなく粟も供えること、その粟は市販のものでもよいが、むしろ氏子さんなどの有志に作ってもらうこと、それによって需要が増え耕作者(農家・企業)も多くなれば、粟を使った食品の開発も可能になること、などが考えられる。
 さらにより良い案を集めて、米も粟も豊かな日本を再興したいと念じている。