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近現代の天皇の御製集・著作

令和5年12月1日

                                        所  功
 近代以降、刊行された御製・御歌集には、明治天皇の『新輯明治天皇御集』、昭憲皇太后の『新輯昭憲皇太后御集』、大正天皇の『大正天皇御製歌集』や、貞明皇后の『貞明皇后御歌集』がある。また、大正天皇の漢詩は、『大正天皇御製詩集』などが刊行されている。
 昭和天皇の歌集は、御在位中刊行の『みやましりしま』や『あけぼの集』(皇后の和歌も収載)があり、また崩御後にも、宮内庁編『おほうなばら』『昭和天皇御製集』や、晩年の歌稿をも収載した所功編『昭和天皇の大御歌』が出版されている。
 平成の天皇の和歌は、皇太子時代のものが『ともしび』(同妃の和歌も収蔵)に収められている。また御製は「おことば」とともにまとめられた宮内庁編『道』(3冊)がある。
 ほかに、昭和天皇以来、天皇自身の研究に基づく著述も多い。昭和天皇には、海洋生物・植物の分類研究で『天草諸島のヒドロ虫類』などの単著、研究者と共同で研究結果をまとめた『那須の植物』などがある。また、ハゼ類の分類研究を専門とする平成の天皇(上皇)は「図鑑 Z 日本魚類館」の項目など、図鑑類の項目執筆(共同執筆も含む)や発表論文が多くある。さらに令和の天皇には、即位以前に水問題の専門家として行った講演をまとめた『水運史から世界の水へ』や、イギリス留学時の体験を綴った『テムズとともに』が刊行されている。

  近代以降の皇族の著作

 幕末から明治にかけて皇族の日記が数多く現存する。有栖川宮幟仁親王、将軍家茂に嫁いだ和宮親子内親王、久邇宮朝彦親王、有栖川宮熾仁親王、同威仁親王の御日記などである。近くは高松宮宣仁親王の日記や梨本宮伊都子妃の日記が刊行されている。
 また、昭和以降刊行されている皇族の著作は多様である。平成の皇后(上皇后)は、絵本「はじめてのやまのぼり」(文章を執筆)の他、国際児童図書評議会での講演を基にした『橋をかける』などが刊行されている。また常陸宮華子妃は、英語の絵本の翻訳を手がけている(『ぼくじゃないよ ジェイクだよ』など)。
 さらに皇族自身の研究や回想を著したものとして、三笠宮崇仁親王の『帝王と墓と民衆』『乾燥の国―イラン・イラクの旅』『古代オリエント史と私』『古代エジプトの神々』、同勢子妃の『銀のボンボニエール』、高松宮喜久子妃の『葵と菊の物語』などがある。三笠宮寛仁親王には『トモさんのえげれす留学』やエッセイ集・対談集がある。長女の彬子女王にも、留学体験記『赤と青のガウン』のほか、日本美術史についての雑誌連載をまとめたものなどがある。高円宮憲仁親王には造詣の深かった芸術分野での専門家との対談集『カーテンコールのこちら側』があり、同久子妃にも宮家のコレクション根付の写真とエッセイをまとめた著作などがある。(『皇室事典・令和版』より、部分補訂)
[追記]
 今年九月、国民文化研究会編著『歴代天皇の御製集』が致知出版社から刊行された。本書の原典は、50年前に日本教文社から上梓された小田村寅二郎同会初代理事長と小柳陽太郎元副理事長の共編[歴代天皇の御歌]である。それを私も長らく愛読してきたが、この新編著は、4名の編集委員と40人の分担筆者による丹念な研究成果を簡明に纏められたもので、末永く活用されるにちがいない。