• ミカド文庫について
  • 歴代天皇の略伝
  • 皇室関係の文献目録
  • 皇室関係の用語辞典
  • 今上陛下の歩み

『テムズとともに 英国の二年間』

令和元年7月11日

                   道徳科学研究センター客員研究員 久禮旦雄
 歴代の天皇・皇族の方々は、「まつりごと」(政治・祭祀)だけでなく、文化においても活躍された方が多い。その著作のほとんどは、当文庫でも所蔵している『列聖全集』に収められている。『テムズとともに 英国の二年間』(学習院教養新書)は、そのような伝統を受け継がれた天皇陛下(当時は皇太子明仁親王の御長男・徳仁親王)の、英国留学の思い出をつづられた随筆である。
 天皇は学習院大学において、中世交通史を専攻されたが、その後、昭和58年6月末から約2年半、オックスフォード大学大学院に留学され、英国水運史について研究された。本書では、教授陣の指導のもと、図書館・文書館で研究を進められる一方で、英国の社会、そしてオックスフォード大学の文化に積極的に関わられるお姿が、生き生きとした筆運びで記されている。
 特に終章で、日英文化についての比較を述べられ、英国の人々が数百年単位で物事を考える一方で、日本人は目先のことにとらわれがちなのは、あるいは石と木の文化の違いに由来するものであろうか、と指摘されているのは興味深い。